トップページ -> 作品集1 -> 野幌の家
 野幌の家
 ■建築物所在地/江別市 ■工事種別/新築工事 ■業務内容/設計・監理 ■施工/藤田工務店
 ■構造/CB ■規模(延面積)/111.68m2

 札幌から江別市野幌に引っ越してきたのは今から 18 年前。そのころの冬は、今より雪が多かったように思う。私達は、友人の両親が仮住まいをしていた平屋の古い家に住み始めた。いくら火を焚いても寒く、大きなつららがつく家だった。ある大雪の日、家がすっぽりと埋もれてしまい、近所には随分心配を掛けたようだ。そんなことから我が家の計画は一気に進み、翌年には安心して冬を過ごせる家ができた。それから何度か増改築を行い、16年を経過した現在でも、まだこの家は成長過程にある。
 敷地は間口7.3m、奥行き13.7mの東西に長い、30坪弱の狭小な敷地である。日照を得るための引きや、屋根からの落雪も考えられない厳しい条件から、コンクリートブロックの外壁を選択し、シンプルな形態とした。外壁は必要最小限の控壁と臥梁で構成し、床と屋根、内部の間仕切りは木造とした。将来的に家族の成長に合わせ、フレキシブルに対応可能なつくりとした。内部に表出するブロック壁は積み放し状態であり、外断熱効果による蓄熱体として多少性能を発揮しているようだ。
 内部の構成は狭小な敷地状況から2階を主な生活空間とし、1階は個室と水廻り等、多少暗くても我慢できる部屋を配置した。2階での生活は快適である。明るく、カーテンが無くてもプライバシーが守られ、1階で焚くストーブの熱が全体にいきわたり、結構いいことずくめである。
 この家の外部空間は、通りに接しているカーポートとその奥に小さな中庭があり、狭いながらも緑豊かで気持ちよいスペースである。夏は通りに対して格子を立て、昼寝をしたりバーベキューをしたり楽しく活用している。隣地との隙間には、夏ヅタ、ブドウ、コクワ、ツルバラ等ツル性の植物を植えている。いつのまにか大きくなり、壁をつたい、デッキをつたい、窓を覆いはじめた。この先どうなるのか少々心配しながら、緑に覆われていく我が家を誇らしく思っている。
(井端明男)

 冬になると子供の頃を思い出す。石炭ストーブが赤々と燃え湯沸かしのお湯がぐらぐらと沸いていた。家の中も外も寒く、いつも吹雪いていた印象が強い。夜は、みんなストーブの廻りにいた。テレビの無い時代である。ストーブは隅っこに潜んでいる寒気を追い出し茶の間だけは暖かく居心地の良い場所だった。あの時代のあのシーンは私にとって家族の原風景である。
 札幌での私達の生活は木造アパートの1階、6畳2間と4.5畳のごくありふれたアパートから始まった。しばらく北海道を離れていたせいか、最初の冬は寒さが身にしみた。しかし、なつかしい冬のにおいが心地良かったことを思い出す。夜中は部屋の中も零下になり、寒さのせいでカッコウ時計は妙に甲高い声で鳴いた。零下を知らせるカッコウ時計である。今から、22年前の話である。冬はつらく、雪はやっかいものと思っていたが、7年間の東京での生活がきびしい冬の生活に対する意識を変えていた。
 あれから22回の冬を迎え、うまくつきあう力が年々ついてきた。最初に楽しく冬を過ごせたのは自作のテーブルである。テーブルといっても、コンパネを2枚重ね少し厚みをもたせ、角を45B切り欠き、その部分に灯油のポット式ストーブを組み込んだ簡単なものである。狭さの極みから生まれたアイディアであり、我ながら満足し自慢したものだ。お湯はいつも沸いていた。煮物をしたり、ジンギスカンをしたり、足下は暖かくいつもストーブを囲んでいた。6畳間に流し台があり、テーブルがあり、それだけで部屋がいっぱいになった。狭いからこそ大きいテーブルが必要だと実感した時である。長い冬を過ごすには欠かせない場所ができ、冬が楽しかった。
 新しい家ができた。コンクリートブロック造、外断熱といえば聞こえはいいが、性能的には常識的数値以下である。しかし普通に生活する上で支障はない。冬は冬らしく、夏は夏らしい格好で過ごせば良い。
窓、キッチン、テーブルは現場施工である。予算が少なかったせいもあるが、既成化された製品の不自由さに不満をもっていた。質素でも生活のサイズの合わせてつくるのが主義であるといってできた家は、何とか暮らせるガランドウの空間であり戦いの始まりだった。竣工したのは12月も暮れ、ブロックは湿気をもち、床のベニヤはケバだち、なんとも寒々しい家である。子供には靴を履かせ、ダウンベストを着せ、着膨れした家族はいつでも外出できる格好で生活していた。
 1年経つとブロックも乾燥し、持ち味と性能を発揮し始めた。急がず時間をかけ、プロセスを楽しみながら理想に近づけたいと思い、毎年、雪の降る頃になるとそわそわと改善計画を始めた。年末だというのに工事が終わらず、窓にシートを貼って新年を迎えたこともある。
 現場施工の窓は様々な形と色をもち、我が家の自慢である。私達にとって窓は外との接点としてメッセージを送り、また生活情景を映し出す開口部として大切にしたい要素のひとつである。窓にはカーテンがない。外から丸見えというより見せているのである。きれいな光を放つガラスのスタンド、静かに揺れるろうそくの炎、木の人形、花をひと鉢、季節によって窓辺を飾っている。足を止めてくれる人もいる。店と間違って入ってくる人もいる。我が家の窓によるコミュニケーション効果は大きい。
 いつの頃からか、緑が壁をつたい2階まで達し、夏を楽しませてくれるようになった。家も時間をかけて植物のように成長したり休養しながら、だんだん豊かになり、夏も冬も気持ちよく過ごせるようになった。デンマーク語に『ヒュックリ』という、居心地がよい・心あたたまる・その家族らしい、という意味の言葉がある。我が家もそういう言葉の似合う家づくりを理想としながら、次の季節を迎える準備を進めている。
いばた・あきお/建築家

 前のページへ... 次の作品へ...
hausトップページ | aku-haus | Be-h@us |What's New | 会社概要 | STAFF
プロジェクト
コーポラティブ |
site map | メール
Copyright (c) 2000 ATELIER AKU co.ltd All Right Reserved.
札幌市中央区北2条西26丁目2-12 アトリエaku
TEL 011-642-1181 FAX 011-641-0240